A Regular Icosahedron Resister

先日,抵抗器を使って正二十面体を作りました. 正二十面体とは右図にあるような,20個の正三角形を面とした多面体です. 以前から何かひとつ多面体の模型を作ろうと考えていたものですが,紙では簡単過ぎて面白みも無いし,菱田為吉氏を真似て木工細工をしたのでは今度骨が折れすぎると怖気づき,なかなか着手出来ずに居ました. ある日,多面体の中でも正多面体ならば辺の長さがすべて等しいので,同じ長さの棒が30本もあれば正二十面体を作れると思い立ち,面では無く,線で多面体を作ろうと考えを改めました. 割り箸やマッチ棒を材料に使っても良かったのですが結果,抵抗器を使うに至りました. なぜって,手元に有ったからです.

正二十面体抵抗

英語で書くと"A Regular Icosahedron Resister"でしょうか. 左に実物の写真を載せます. 辺は全て抵抗器(51Ω)です. 抵抗器はその長さが全て等しく,また接合にはハンダが使えるので,正多面体を組むにはピッタリの材料です. 少しの歪みは気にせず,試行錯誤することおよそ2時間で完成しました. 大きさは直径120mmの球に収まるくらいです. デスクの上に転がしておけば,ちょっとお洒落なアイテムに見えて来ます.

電気回路の問題

完成した直後は,やっと作れた"多面体"と捉えていた正二十面体抵抗も何度か見るうちに,やっと作った"電気回路網"に見えてきて次のような問を思いつきます.
(問) 辺が抵抗器の正二十面体がある. どの辺も抵抗値がRの時,向かい合う頂点間の合成抵抗はいくらか?
実際にテスタで測れば良い話なのですが,それでは面白く無いのでまずは計算してみることにしました.

考える

(問)では,左図で言うA-B間合成抵抗を問うています. 合成抵抗は直列ならば抵抗値の総和 $ R_1 + R_2 + ... + R_n $ ,並列ならば各抵抗値の逆数の総和の逆数,つまり $ 1 / (1/R_1 + 1/R_2 + ... + 1/R_n) $ で求まります. しかし,今回のような網目状の回路の場合,この方法では少々無理が有ります. ループ方程式を解く方法も考えられますが,ここでは電流の流れに着目して間接的に合成抵抗を求めてみようと思い立ちます. まず,考える抵抗が多すぎるので簡略化出来ないか考えました. よく見ると菱型の部分はブリッジ回路に成っているでは有りませんか. 辺はすべて同じ抵抗値なので,このブリッジ回路は平衡状態にある訳です. そうと分かれば,図中に黄色で描かれた辺に電流は流れません. 青色の辺だけ考えれば良くなります. A-B間に電圧$ V $ [V]を印加した時に, $ I $ [A]の電流が流れたとします. この時Aから入り込んだ電流は,Aから放射状に伸びる5つの辺へ均等に流れてゆきます. つまり,Top部分では各辺に $ I/5 $ [A]づつ流れる訳です. その一つだけに注目して矢印を描いたものが上図です. さて,5等分された電流はMiddle部分で各々更に2等分されます. よって各辺に $ I/10 $ [A]の電流が流れる訳です. Bottomへ達した電流は2つづつ合流し合い,結局ひとつの辺に $ I/5 $ [A]づつ流れることになります. 黄色い辺は電流ゼロなので,その辺で結ばれた地点同士は同電位であるはずです. よって,オームの法則より次式を得ることが出来ます.
$$ V = R\left( \frac{I}{5} + \frac{I}{10} + \frac{I}{5} \right) $$
電圧Vの式を得ました. A-B間の電圧が $ V $ [V]の時,電流が $ I $ [A]流れるという仮定の元に成り立った式です. オームの法則では $ V/I $ がその時の抵抗値に等しいと謳っています. 上式の左辺を $ V/I $ にしてみます.
$$ \frac{V}{I} = \frac{R}{2} $$
なんということでしょう. $ R $ の半分の値がA-B間の抵抗値に等しいという結果を得たのです.

実測値

右の画像を御覧ください. クリックすれば飛び出します. 辺に使った抵抗器は51[Ω]でした. (問)で言うA-B間抵抗を実際に測定した所,25.6[Ω]という値に成りました. 誤差を考えると $ R/2 $ に成っていることが納得出来るはずです. 驚くべきことに正二十面体の合成抵抗は計算通り,同じ抵抗値の抵抗器2本を並列に繋げたも同じ,すなわち $ R/2 $ [Ω]になったのです. 各部の電圧も測って,前項"考える"で考えたことと矛盾していないかを確かめました. 黄色の辺の端子間は確かに0[V]であり,他もTop部の電圧降下は $ RI/5 $ [V],Middle部は $ RI/10 $ [V],Bottom部は $ RI/5 $ [V]でした.
結果はとても興味深いものでした. ちょうど半分の抵抗値に成るなんて,作っていた時は勿論,計算を終えた時も半信半疑,測定している最中もテスタの故障を疑いましたが,事実は事実です. いやはや,何だかすっかりとひとりで楽しんでしまいました. まさか多面体ひとつでも,これだけ沢山の遊び方が出来るとは. 実際の回路に"1/2抵抗"として組み込んでみるのもなかなかに乙だとは思いましたが,どこか使うのも惜しい気持ちになり,今ではデスクの上の華のひとつと成っています.
2032670144723784569 http://www.storange.jp/2014/08/a-regular-icosahedron-resister.html http://www.storange.jp/2014/08/a-regular-icosahedron-resister.html A Regular Icosahedron Resister 2014-08-18T19:07:00+09:00 http://www.storange.jp/2014/08/a-regular-icosahedron-resister.html Hideyuki Tabata 200 200 72 72