眼鏡の形状による呼称

いつもお世話になっている眼鏡屋さんへ行ったとき、眼鏡の形状による種類ごとの呼称について教えてもらった。覚え書きも兼ねて、調べたことをまとめる。

眼鏡の形4種類(上からラウンド、ボストン、クラウンパント、ウェリントン)とそれぞれの名称を描いたイラスト
眼鏡の形状による種類ごとの呼称

眼鏡フレームの形による種類ごとの呼び名というと、例えばいわゆる丸眼鏡は「ラウンド」、横長の丸眼鏡は「オーバル」、上部がやや平たく広がった丸型は「ボストン」、下が(すぼ)まった台形型(逆台形型とも)は「ウェリントン」など。そして「ボストン」の上辺のカクつきが強調された形は「クラウンパント」と呼ぶそうで、これはフランスで50年代ごろに流行した形であり、巡り巡って昨今のトレンドでもあると聞いた。

基本としては丸っぽいか四角っぽいかで「ラウンド」か「スクエア」と大きく分類できるだけでも充分そうな様子だが、更に細分化されて呼称がつけられている辺り、生物学ぽさもあり面白い。もちろん細分化された中でも更に変異種のような、デザイナの“遊び心”がこもったユニーク形状のフレームもちらほらある。

さて、わたしが特に気になったのは「ラウンド」や「オーバル」など英語で図形を表すストレートな呼び名がある一方、「ボストン」や「ウェリントン」など地名と思しき呼び名、更には「クラウンパント」と造語らしき響きのものが存在すること。まずは地名らしき名称について調べてみた。

便利なべんりなインターネット。どうやら「ボストン」と「ウェリントン」は日本特有の呼称で、これは眼鏡ブランド「EYEVAN(アイヴァン)」が自社眼鏡のモデル名として名付けたときの名残だそう。ほかにも横長の長方形型を「レキシントン」と呼んでいたよう。モデル名が眼鏡の形状の名前として定着してしまうほど影響力があったことが伺える。このあたりは下記リンクの元記事を参照願いたい。

では、いま流行りの「クラウンパント」とはナニモノだ?調べると、どうやらフレーム上部が平行に切れている様子を“Crown(クラウン)”、すなわち“冠”と表現したよう。そして続く“Panto”という語はフランス語では「ボストン型」を指すのだとか。合わせて「Crown-Panto(クラウンパント)」…。

しかし、クラウンが冠であることは分かるが、“Panto”というフランス語には元々どういう意味が含まれているのだろう。仏英辞典などで調べると“Panto”は“Pantomime”、すなわち“パントマイム”の略語としか出てこない。“パントマイム型眼鏡”なんて、そんなはずはない。違う意味があるはずだ。ちなみに“Mime”は英語で言う“Mimic”、すなわち“真似る”といった意味を持つ言葉である。では“Pantoに真似る”とはどういうことか?この単語、ひょっとして接頭辞なのかな、と思い調べてみると次のページを見つけた。

ギリシア語が語源の“pant-”という接頭辞には「すべての」や「汎」という意味があることが判明。これで合点がいった。日本語で「ボストン型」と呼ばれるあの眼鏡の形状、英語では“Pantoscopic”と呼ばれる。つまり“Panto-Scope(すべての視野)”という意味になる。事前に「ボストン型」が英語圏で何と呼ばれているのか調べたとき、次の記事を読んでいたので気づけた。

記事の内容を要約すると「ボストン型」は英語では“Pantoscopic”、広く略されて“Panto”と呼ばれ、視野の広い眼鏡(ワイドビュー眼鏡)のことだという。確かにあの形状は眼球の動きに対して広範囲をカバーできるなぁ、と妙に納得。つまり“Pantoな視野”、すなわち“すべての視野”、“広い視野”、“ワイドビュー”ということなのだろう。

じゃあ「ウェリントン型」は英語で何というのだろう…と調べると、あの形は元々サングラスで有名なブランド「RAYBAN(レイバン)」が50年代あたりにデザインした形状のようで、その頃のモデル名「Wayfarer(旅人)」が今も形状の名前として残り、今でも“Wayfarer”と呼ばれているそう。確かに“Wayfarer”で調べると、“Wayfarer”というモデル名のRAYBAN製サングラスが出てくる。ちなみに、お気づきの方もいると思われるが、元々サングラス向けにデザインされた形状なので、初期はレンズ色に馴染む黒色フレームばかりだったよう。時代とともにサングラスのみに留まらず、眼鏡のフレームとしても浸透、変化して、現代では逆台形型フレームを英語圏で「Wayfarer」と呼ぶまでに至った歴史がある様子。この辺りは下記リンクの記事情報。

70や80年代の映画、「The Blues Brothers」や「They Live」の主人公らは確かこの形(ウェリントン型/Wayfarer型)のサングラスを着けていたなぁ、と思い出す。お、また観たくなってきた。

もうひとつ、今回の調べで判明し驚いたこと。それは接頭辞“pant-”と漢字の関係。なんと「汎」はこの“pan(t)-”の音訳なのだそう!“汎用(はんよう)”なんて言葉はまさに書いて字の如く“あらゆるところ(すべて)に用いる”という意だ。普段目にする漢字の元がギリシア語由来の英語“pan-”だったとは…!

となると、“Panto-mime(パントマイム)”という語は“あらゆる(動き)を真似する”という意味だと捉えることができる。思考すっきり。

ということでまとめると、上辺が平たい丸型である「ボストン型」は英語で「Panto」、逆台形型の「ウェリントン型」は英語で「Wayfarer」、丸眼鏡=ラウンド(Round)や横長楕円型=オーバル(Oval)、四角型=スクエア(Square/Rectangle)はほぼそのまま、そして上部のカクつきが際立ったボストン型である「クラウンパント」は英語圏でもおそらく通じる語であり、その意味は“冠のようなボストン型”といったところか。

眼鏡の形状を通して、くっきりはっきり見えた、言葉の繋がりと眼鏡の歴史。

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