矩形波,のこぎり波,三角波の複素Fourier級数展開 (知っておくこと編)

矩形波,のこぎり波,三角波のFourier級数展開を行うにあたって,知っておくと便利なトリックがいくつかあります.

$$ \cos(n \pi) = (-1)^n = (-1)^{-n} $$

$ n $が整数であれば成り立つ等式です. $ n $が奇数ならば$ \cos(\pi) = -1 $,偶数ならば$ \cos(0) = 1 $となるからです. のこぎり波を級数展開するときに登場するテクニックです.


$$ \begin{aligned} \sum_{n=1}^{10} \frac{\cos(n \pi) - 1}{n} &= \sum_{m=1}^{5} \frac{-2}{2m-1} \\[1.5em] \sum_{n=1}^{\infty} \frac{\cos(n \pi) - 1}{n} &= \sum_{m=1}^{\infty} \frac{-2}{2m-1} \end{aligned} $$

最初は1行目だけに集中しましょう. $ \cos(n \pi) $はnが偶数のときに1,奇数のときに-1となります. つまり偶数のとき,分子が$ 1-1=0 $になるので$ \sum $の中はゼロになってしまうのです. そこで,奇数の時のみを考えてみます. 奇数ならば分子は$ \cos(n \pi)-1 = -2 $となります. ここで思い切って総和を書き直したものが右辺です. $ n = (2m-1) $と置き換えてあります. これで$ m $が$ 1,2,3... $と増えても$ n $であった部分は奇数にしかなりません. このように,すべてが奇数の場合にしかならないよう工夫しておけば,$ \cos(n \pi)-1 $をただの$ -2 $と書いてもまったく問題ない訳です. おっと,ひとつだけ忘れ物. 総和の終値$ 10 $を半分の$ 5 $にしましょう. 奇数は2回に1回しか出てこないからです. これで等しくなります. では,2行目を見てみましょう. おもしろいことに終値が$ \infty $の場合,$ \infty / 2 = \infty $と半分にしてもその値は変わらないのです. 無限にある整数の中の半分は偶数,半分は奇数なのですが,その半分である奇数も無限にあるのでこのようなことが起こります. 不可思議な無限の性質です. この辺りに興味のある方は"アレフ・ゼロ"で調べるか,こちらの記事を読んでみましょう.


$$ \begin{aligned} \mathrm{e}^{i \theta} &= \cos \theta + i \sin \theta \\[1em] \sin \theta &= \frac{\mathrm{e}^{i \theta} - \mathrm{e}^{- i \theta}}{2 i} \\[1.5em] \cos \theta &= \frac{\mathrm{e}^{i \theta} + \mathrm{e}^{- i \theta}}{2} \end{aligned} $$

Eulerの公式はとても大切で,複素Fourier級数展開では必ず利用します. 周期のある函数(信号)を$ \sin $波と$ \cos $波へと分解するFourier級数展開において,$ \sin(\theta) $と$ \cos(\theta) $の和である$ \mathrm{e}^{i \theta} $はとても合理的な表現だからです. これひとつで基本波2つをいっぺんに表現出来るのですから,使わずには居られませんね.


$$ \begin{aligned} \sum_{n=-3}^{3} n\mathrm{e}^{in} &= 3\mathrm{e}^{i3} - 3\mathrm{e}^{-i3} + 2\mathrm{e}^{i2} - 2\mathrm{e}^{-i2} + \mathrm{e}^{i} - \mathrm{e}^{-i} + 0 \\[1em] &= 2i \cdot 3 \sin(3) + 2i \cdot 2 \sin(2) + 2i \cdot \sin(1) \\[1em] &= 2i \sum_{n=1}^{3} n \sin(n) \end{aligned} $$

これは少しトリッキーな等式ですが,しっかりと1歩づつ歩んで行けば怖いことはありません. 始値と終値が$ -3 $と$ +3 $のように同値で符号違いの総和があります. その中には$ n \mathrm{e}^{in} $のようなネイピア数の虚数乗と,まるでEulerの公式を彷彿させる式があります. まずは$ \sum $を展開しましょう. 1行目右辺のように符号違いに展開して並べると見やすいです. 符号違いに並べたことで次に示すEulerの公式が姿を現します.

$$ 2i \cdot n \sin(n) = n \mathrm{e}^{i n} - n \mathrm{e}^{- i n} $$
これに従ってすべて置き換えたものが2行目になります. これを$ 2i $で括れば,なんと$ n \sin(n) $という形で$ 1 $から終値$ 3 $までの総和へまとめることが出来るのです. 始値と終値が符号違いの同値で,ネイピア数の虚数乗が中にある総和を見かけたら,符号違いの同値でまとめてEulerの公式を適用し,$ \sin $や$ \cos $の総和へとまとめ上げることが出来る,というこのトリッキーな技. 総和の中身がシンプルになるだけではなく,始値が$ 1 $になるので単純に考えて計算時間は元の約半分になります. 素晴らしい! Wolfram|Alphaでこの等式を検証


$$ \begin{aligned} f_T(t) &= \sum_{n=-\infty}^{\infty} C_n \cdot \exp{ \left( -int \frac{2 \pi}{T} \right) } \\[2em] C_n &= \frac{1}{T} \int_{-T/2}^{T/2} f_T(t) \cdot \exp{ \left( -int \frac{2 \pi}{T} \right) } dt \end{aligned} $$

さて,これが複素Fourier級数展開式です. まずはじめは2行目の係数$ C_n $を計算します. そこで求まった係数を1行目の式へと代入すれば函数$ f_T(t) $の展開式が求まるわけです. ここで大文字$ T $は級数展開する函数の1周期を,小文字$ t $は時間(パラメタ)を表していますので,お間違えのないように. なお,上のようにネイピア数の肩(指数部)に多くの文字が乗ってしまい見辛いと判断した場合,見やすさのため$ \exp(\alpha) $のように書き直します. $ \exp(\alpha) = \mathrm{e}^{\alpha} $です. ネイピア数だってきっと重くて肩凝っちゃうでしょうから.


さて,複素Fourier級数展開するにあたって知っておくと良い数式たちは出揃いました. いよいよお楽しみ,展開の時間です. 矩形波,のこぎり波,三角波を順に級数展開して,展開した結果がきちんと元の波形となるか確かめるところまでやってみます.
複素Fourier級数展開 (展開編)
1964535312252524976 http://www.storange.jp/2015/08/fourier.html http://www.storange.jp/2015/08/fourier.html 矩形波,のこぎり波,三角波の複素Fourier級数展開 (知っておくこと編) 2015-08-30T20:26:00+09:00 http://www.storange.jp/2015/08/fourier.html Hideyuki Tabata 200 200 72 72